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【人材開発支援助成金】事業展開等リスキリング支援コースの要件や助成額などを解説

人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースとは、新規事業の立ち上げに必要な知識やスキルを習得するために訓練を導入した際に、訓練経費の一部を補助してくれる制度です。  

会社規模を拡大するために新規事業を始めようと考えている方や環境に配慮した取り組みを始めたいと考えている方にとって、とても役立つ支援です。しかし、受給要件として対象事業や訓練内容が決まっているため、事前にしっかり確認しておきましょう。  

本記事では、人材開発支援助成金の概要や受給対象、支給の流れまでが網羅的に理解できます。ぜひ参考にしてみてください。

人材開発支援助成金以外で、経済産業省が提供しているリスキリング支援施策も本記事の最後に記載しているので、参考にしてみてください。

※本記事は2023年5月時点の情報をもとに記載しております。人材開発支援助成金・事業展開等リスキリング支援コースの要件や内容は今後変わる可能性もあるため、厚生労働省のWebサイトにて最新情報を確認するようお願いいたします。

▼目次

1.人材開発支援助成金とは?(事業展開等リスキリング支援コースとは)
2.事業展開等リスキリング支援コースの各種要件
 2-1.基本要件の前提
  2-1-1.事業展開
  2-1-2.デジタル化・DX化
  2-1-3.グリーン化
3.助成率・助成額・支給額について
4.事業展開等リスキリング支援コースの受給対象者
5.事業展開等リスキリング支援の対象とならない訓練
6.助成金受給の基本的な流れ
 6-1.事業内計画の作成等
 6-2.計画届の申請
 6-3.訓練の実施
 6-4.支給申請
7.助成金に関する問い合わせ先一覧
8.経済産業省のリスキリング支援施策について
 8-1.デジタル人材育成プラットフォーム(マナビDX)
 8-2.第四次産業革命スキル習得講座認定制度
9.まとめ

1.人材開発支援助成金とは?(事業展開等リスキリング支援コースとは)

人材開発支援助成金とは、労働者に対して職務に関連した知識習得のために職業訓練を行った場合の訓練金などを一部支援する制度です。

新規分野へ参入するには、会社の方針に合わせて、実際に現場で働く労働者が知識を身につけスキルを磨く必要があります。そこで、ある一定の分野や条件のもと、労働者の知識やスキル習得のための訓練を実施した際に訓練費用の一部を国が負担してくれるのが、人材開発支援助成金です。

本助成金のように企業の成長を手助けする援助をすることで、労働者の多様な職業能力開発の機会の確保にもつながります。結果として、企業側にも労働者側にもメリットが生まれるというわけです。

そして、人材開発支援助成金には7つのコースがあり、そのうちの1つが令和4年12月に追加された「事業展開等リスキリング支援コース」です。

事業展開等リスキリング支援コースは、既存事業に捉われない新規分野への参入やデジタル・グリーンのような成長分野を取り入れて、業務効率の改善を目的としています。

2.事業展開等リスキリング支援コースの各種要件

事業展開等リスキリング支援コースの受給には、決められた要件を満たす必要があります。要件には、訓練内容や新規で始める事業内容が関係します。

新規事業や人材育成の内容が要件とマッチしているかを確認してみてください。

2-1.基本要件の前提

事業展開等リスキリング支援コースの支援を受けるには、以下の基本要件があります。

  • 既存事業にとらわれず、新規事業の立ち上げ等の事業展開に伴う人材育成
  • 業務の効率化や脱炭素化などに取り組むため、デジタル・グリーン化に対応した人材の育成

出典:人材開発支援助成金|厚生労働省

ポイントは「新規の事業展開」「デジタル化・DX化による業務効率改善」「環境に配慮したグリーン化」に該当する人材育成を目的としていることです。

このような新規事業の展開やデジタル化、グリーン化を促進することで、新たな雇用の促進や従業員の育成につながり、時代の変化に合わせて社会や企業の成長につながります。

さらに、以下の要件に当てはまる訓練でなければ、助成金の給付対象にはなりません。

  • 仕事・事業活動と区別して実施される訓練であること
  • 訓練時間が10時間以上であること
  • 事業展開をする場合は、訓練を開始した日から起算して、3年以内に実施する予定または6ヶ月以内に実施したものであること
  • 事業展開にあたり、新たな分野で必要となる専門知識やスキルの習得を目的とした訓練または、事業展開を行わないが事業主において企業内のデジタル化・DX化やグリーンカーボンニュートラル化を進める場合に、これに関連する業務に従事させるうえで必要となる専門的な知識やスキルの習得を目的とした訓練であること

訓練自体が仕事と区別がつかない場合には助成金の給付対象外になるため注意が必要です。

基本要件である「事業展開」「デジタル化・DX化」「グリーン化」についてより詳しく解説します。

2-1-1.事業展開

事業展開とは、新商品の販売やサービスの提供によって、新たな分野に進出することです。既存事業内で、商品の製造方法やサービスの提供方法を変更する場合も、事業展開に該当します。

事業展開の一例として、以下のようなケースが挙げられます。

  • 自動車メーカーが新商品の開発・製造・販売を開始する
  • 不動産業を営む会社が、建築業に関する新規事業を開始する
  • 店舗型の学習塾を運営していたが、オンライン専用のクラスも新たに開設する

2-1-2.デジタル化・DX化

デジタル化・DX化とは、デジタル技術を取り入れ、業務効率改善や既存商品やサービス、業務そのものを変革することです。デジタル化・DX化を進めると、従業員や顧客の満足度向上に役立ったり、競争上の優位性を確立できたりします。

デジタル化・DX化の一例として、以下のようなケースがあげられます。

  • 患者向けに病院の診察予約ができたり待ち時間を把握できたりするアプリを開発する
  • 飲食店でのアルバイト管理にITツールを導入し、シフト管理の負担を軽減する
  • ホテルでのチェックイン・チェックアウトにQRコードを導入し、顧客の手続きを簡略化する

2-1-3.グリーン化

グリーン化とは、省エネを意識したり再生可能エネルギーを活用したりして、CO2などの温室効果ガスの排出を抑えることで、環境に配慮した活動を指します。

地球環境や社会に配慮した活動を進めたい企業にとっては大変喜ばしい制度でしょう。

グリーン化の一例として、以下のようなケースが挙げられます。

  • 農薬散布にガソリンを使用しないドローンを導入する
  • 太陽光パネルを社屋の屋根に設置する
  • 社用車を電気自動車に変更する

既存事業にデジタル化・DX化やグリーン化を取り入れた場合にも、事業展開等リスキリング支援コースの適用要件に該当します。

3.助成率・助成額・支給額について

人材開発支援助成金の助成率・助成額は、以下通りです。※()内は大企業に適用される数字です。

  • 経費助成率……75(60)%
  • 賃金助成額……1人1時間あたり960(480)円

受講者一人あたりの助成限度額は、以下のように訓練時間によって異なります。

  • 10時間以上100時間未満……30万円(20万円)
  • 100時間以上200時間未満……40万円(25万円)
  • 200時間以上……50万円(30万円)

専門実践教育訓練の指定講座の場合は、一律で200時間以上の区分に該当するため注意が必要です。eラーニングと通信制による訓練等の場合は、一律で10時間以上100時間未満の区分になります。

定額制サービスによる訓練の場合は、訓練時間数に応じた限度額は設けられていません。

1事業所の1年度あたりの助成限度額は、1億円です。

また、賃金助成限度時間は1人1訓練あたり1,200時間(専門実践教育訓練については1,600時間)までと定められています。

4.事業展開等リスキリング支援コースの受給対象者

事業展開等リスキリング支援コースの受給対象者は、以下の要件を全て満たす必要があります。

  • 助成金を申請する会社や事業所の雇用保険者であること。つまり正社員や契約社員などの雇用形態で、1週間の所定労働時間が20時間以上ある者。育児休業中訓練を受ける場合は、雇用保険者であり、育児休業期間中に育児休業中訓練を受講開始している者。
  • 訓練の受講時間は、実訓練時間数の8割以上であること。実訓練時間数とは、移動時間など支給対象とならない時間と、支給要件に満たない方法で行われた訓練を総訓練時間数から差し引いた時間。ただし、eラーニングや通信制による訓練であれば、この時間要件を満たさなくてもよい。
  • e ラーニングによる訓練等と通信制による訓練等の場合は、訓練の受講を修了していること。
  • 定額制サービスの場合、「定額制サービスによる訓練に関する対象者一覧」(様式第 4-2 号)に記載される必要がある。また「職業訓練実施計画届」(様式第1-1号)の定額制サービスに含まれる訓練を修了しており、訓練合計時間が1時間以上の者。

業務内ではなく、OFF-JTとして規定時間以上の訓練を実施しているかがポイントになるため、事前に要件を確認しておきましょう。また従業員の区分にも注意が必要です。訓練期間中に被保険者である必要があります。訓練を修了した後に正社員などの被保険者になるのでは、受給対象者の要件を満たしません。

また受講した訓練の方法によっても、要件が異なるため確認が必要です。

より詳しい内容は、厚生労働省の「人材開発支援助成金」をご覧ください。

5.事業展開等リスキリング支援の対象とならない訓練

訓練のなかには事業展開等リスキリング支援の対象とならない訓練があるため、注意が必要です。

以下の11の内容は助成の対象外になるため、事前に確認しておきましょう。

  • 業務上の義務として実施されるものではなく、労働者自身が自らの意思で行うもの。※育児休業を取得中の労働者に対する訓練は例外。
  • 通信制訓練の場合に、教材の提供のみで添削指導や質疑応答が行われないもの
  • eラーニング・通信制訓練/定額制サービス訓練の場合に、広く国民の職業に必要な知識及びスキルの習得を目的としたものではなく、特定の事業主への提供を目的としたもの
  • 定額制サービス訓練の場合に、定額制サービス利用者が自ら雇用する被保険者以外の者だけを対象としているもの
  • 定額制サービス訓練の場合に、定額制サービスに含まれる訓練内容が支給対象外訓練ばかりのもの
  • ビデオ視聴だけの講座。※eラーニング訓練・通信制訓練/定額制訓練の場合は例外。
  • 海外研修や洋上セミナーなど、国外で実施するもの
  • 事務所、関連企業(取引先含む)の勤務先などの、生産ラインまたは就業の場で行われるもの
  • 現場実習、営業動向トレーニングなどの通常の仕事と変わらないもの
  • 訓練指導員免許保持者、または専門的知識・スキルを有している講師によって行われないもの
  • 訓練の実施にあたって適切な方法でないもの。例えば、あらかじめ定められた計画どおり実施されない訓練など。

訓練はあくまでも業務内で行われることがポイントです。そのため、自らが学びたいと思い訓練を受けたものは該当しません。

また、eラーニングなどの学習では、動画だけで学ぶものや教材だけ購入するものもありますが、事業展開等リスキリング支援では、添削や質疑応答といったサービスが含まれている必要があります。訓練を受講する前に、訓練に含まれる内容を確認しておく必要があります。

普段仕事をしている場所や現場での通常業務と混同してしまうトレーニングも、訓練と認められないため注意しておきましょう。

より詳しい内容は、厚生労働省の「人材開発支援助成金」をご覧ください。

6.助成金受給の基本的な流れ

助成金を受給するには事前にいくつかの書類の作成があり、提出期限が定められているものもあるので注意しましょう。

助成金受給の基本的な流れは、以下の通りです。

  1. 事業内計画の作成等
  2. 計画届の申請
  3. 訓練の実施
  4. 支給申請

それぞれの流れを詳しく解説します。

6-1.事業内計画の作成等

助成金の受給を受けるためには、まずはどのような事業内容でどのような訓練を行うのかという事業内計画を立てます。事業内計画の作成では、「職業能力開発推進者」を選任して「事業内職業能力開発計画」を作成する必要があります。

職業能力開発推進者とは、教育訓練部門や人事部の上長など、職業能力開発について権限を与えられる者のことです。1人以上必ず選任します。

事業内職業能力開発計画は、人材育成の基本的な会社方針などを記載する計画で、経営理念や経営方針に基づいて作成します。

6-2.計画届の申請

続いて、計画届の申請を行います。訓練実施計画届と年間職業能力開発計画を作成し、訓練開始の1ヶ月前までに、管轄の都道府県労働局に提出します。

定額制サービスによる訓練を実施する際には、定額制サービスの契約期間の初日から起算して1ヶ月前までに提出しなければならないので、注意しましょう。

また、訓練には事業内訓練(社内で企画し実施する訓練)と事業外訓練(社外の者が企画し実施する訓練)があります。それぞれで必要書類が異なるため、管轄の都道府県労働局に確認しておきましょう。

6-3.訓練の実施

計画届の申請が受理されてから、訓練実施計画と年間職業能力開発計画に基づき、訓練を実施します。

万が一、訓練内容の変更を行う場合は「訓練実施計画変更届」の提出が必要です。

6-4.支給申請

訓練が終了すると、助成金の支給申請を行います。申請する際は、訓練終了日の翌日から起算して2ヶ月以内に「支給申請書」と必要書類を管轄の労働局に提出する必要があります。

期限内に申請が行われなかったり、申請内容の不備を修正しなかったりした場合には、助成金が支給されない可能性もあるため、必ず期限を遵守して提出しましょう。

7.助成金に関する問い合わせ先一覧

助成金に関する問い合わせ先を、一部記載しております。

助成金に関する詳しい内容の確認や、各種問い合わせは管轄の都道府県労働局の窓口までご連絡ください。

​労働局担当課電話番号
​北海道労働局雇用助成金さっぽろセンター6階011(788)9070
東京労働局ハローワーク助成金事務センター03(5332)6925
神奈川労働局神奈川助成金センター045(277)8801
千葉労働局職業対策課分室043(441)5678
愛知労働局あいち雇用助成室052(688)5758
京都労働局助成金センター075(241)3269
大阪労働局助成金センター06(7669)8900
兵庫労働局職業対策課(ハローワーク助成金デスク)078(221)5440
福岡労働局職業対策課福岡助成金センター092(411)4701

参考:助成金のお問い合わせ先・申請先|厚生労働省

47都道府県にそれぞれ労働局がありますので、ここに記載されていない労働局の連絡先は厚生労働省のサイトでご確認ください。

8.経済産業省のリスキリング支援施策について

厚生労働省の人材開発支援助成金以外にも、経済産業省が以下のリスキリング支援施策を行っています。

  • デジタル人材育成プラットフォーム(マナビDX)
  • 第四次産業革命スキル習得講座認定制度

それぞれ詳しく解説します。

8-1.デジタル人材育成プラットフォーム(マナビDX)

デジタル人材育成プラットフォームのマナビDXとは、デジタルスキルを身につけられる講座を紹介しているポータルサイトです。

サイト内の講座には無料で受講できるものや、受講料の支援を受けられる講座もあり、これからDXリテラシー・ITリテラシーを高めたい方は、お試しでの受講も可能です。

扱っている講座は、主にDX(デジタル・トランスフォーメーション)に関する講座ですが、デジタルリテラシーやデジタル実践、また女性におすすめのITスキルなども扱っています。

またマナビDX内の講座は、経済産業省の審査基準を満たした講座が集まっているので、講座内容は質が担保されており、安心して受講できます。

初心者からより実践的な内容が学びたい人に合わせて、各講座には、1〜4のレベルが設定されており、自身のレベルに合わせて講座の選択が可能です。取得したいスキルに合わせた講座を調べられるため、効率的に学べます。

より詳しい内容を知りたい方や、実際に学んでみたい方は、「マナビDX」をご覧ください。

8-2.第四次産業革命スキル習得講座認定制度

第四次産業革命スキル習得講座認定制度とは、経済産業大臣が認定するデジタル技術関連の講座です。

今後、雇用の需要が見込まれるIT・データ領域の知識やスキルを社会人が習得し、キャリアアップを図ることを目的として設立されました。

2023年5月2日時点で、以下の128講座が学べます。

  • AI、IoT、クラウド、データサイエンスの分野:112講座
  • 高度なセキュリティやネットワークの分野:10講座
  • IT利活用の分野(自動車等ものづくり関連):6講座

参考:第四次産業革命スキル習得講座 一覧|経済産業省

専門実践教育訓練として厚生労働大臣の指定を受けている講座については、人材開発支援助成金や専門実践教育訓練給付金の支給が受けられます。

より詳しい内容を知りたい方や、実際に学んでみたい方は、「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」をご覧ください。

9.まとめ

本記事では、人材開発支援助成金のリスキリングに関して詳しく解説しました。

人材開発支援助成金とは、労働者に対して職務に関連した知識習得のために職業訓練を行った場合の訓練金などを一部支援する制度です。そして人材開発支援助成金のコースの一つが、事業展開等リスキリング支援コースです。事業展開等リスキリング支援コースは、既存事業に捉われない新規分野への参入やデジタル・グリーンのような成長分野を取り入れて、業務効率の改善を目的としています。

ポイントは、「新規の事業展開」「デジタル化・DX化による業務効率改善」「環境に配慮したグリーン化」に該当する人材育成であることです。

受給申請する際に必要な書類や要件など、より詳しい内容を確認したい方は管轄の都道府県労働局に確認してみてください。

また、DX人材の育成に限らず、企業全体のDX推進にお悩みの方も気軽に株式会社ココエにご相談ください。

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