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AIとデータが変えるマーケティングの進化|後編:AIが変える消費行動

産学連携 |

当社データサイエンス事業のアドバイザーを務められている西本章宏先生にお話をお伺いいたしました。西本先生は、関西学院大学の教授として「マーケティング戦略」「マーケティングサイエンス」「消費者行動分析」などを専門としてご研究されております。本インタビューでは消費者行動の変化に伴うマーケティングについてお伺いいたしました。

近藤
前半部分では、リテールメディアやデータ起点の「会社脳」というお話を伺いましたが、AIが発展し続けている昨今の消費者行動の変化についてお伺いさせていただきます。
ChatGPTを初めとして、今では色々なAIが出てきたと思うのですが、AIやデータが活用され始めて、消費者の行動はどのように変化しつつあるのでしょうか?

西本先生
分かりやすい一例として、Z世代のデジタル消費と購買行動の関係があります。Z世代は、毎日スマートフォンをたくさん使いますので、他の世代と比較して色んな情報が見えてしまいます。それゆえ、購買に至るまでの過程を非常に慎重に、石橋を叩くように買い物をするようになりました。
洋服一つ買うにしても、ときめきで買うとかじゃなくて、自分の骨格に似た人が着ているSNS投稿を見たり、自分にも合いそうかどうか何度も他人のレビューを見たりと、本当に慎重に買い物をするようになりました。

天野
本当にその通りで、一着の洋服を買うのに一週間かけたりしますね。
ネットで見てから、実際に店舗で試着をして良ければ、またネットに戻って買うこともありますね。

西本先生
Z世代には「正解」ではなく「納得解」を提供することが正解であるといった文脈なんかもあります。

近藤
正解を与えて納得するような世代ではないってことですね。

西本先生
次のα(アルファ)世代の子たちはある程度の「正解」を与えることが正解になってくるとも言われています。Z世代はスマホ片手にSNS世代なわけですけれども、α世代はAIが隣りにいるようになってきますので、ある意味いつも世界中の情報を咀嚼して一つの中庸的なアウトプットを提示してくれる相棒がいることになります。それゆえ、そのアウトプットをα世代は「間違いではない」と判断します。それが自分にとって最高にカスタマイズされた答えかは別として、世界中の情報を集めてそういうアウトプットを出してくれているわけですから「間違いではないよね」ということです。またマスメディアの世界を生きてきた我々の世代に近い感覚がアップデートされて戻ってくるかもしれませんね。

近藤
α世代はZ世代と違って、また直線的に購買に向かっていくことになりますか?

西本先生
そうだと思います。

近藤
そうするとマーケティングの方向性も変わってきますよね。
彼らなりにもう既にAIという莫大なデータを持っているわけじゃないですか。その人たちと会話することを前提にマーケティングがないと、こちらとしても単純な答えを与えても向こうの方が上手だったりしますよね。

西本先生
変わってきていると私は思います。私は20年間マーケティングに関わってきて、常に最先端の事象を見ていることで、「一歩先を見ながら半歩先をどう提供するか」がマーケティングの1つの本質だと思っていますし、そういう意味ではAIのビジネスへの関わりとしては、ケンタウルス型でいるべきだというのが現在地なのかなと思います。

近藤
ケンタウルス型とはどのような手法になるのでしょうか。

西本先生
いわゆる「半人半馬」ですよね、例えば、広告クリエイティブをクライアントに提案する際にも、そのラフ案はAIに任せて、実際に詰めていく段階でデザイナーが入って整えていくような関わり方なんかが想定されます。そのほかにも、英会話のトレーニングにAIを導入する事例なんかは面白いですよね。
英会話の講師が人間だったら恥ずかしいですが、「AIであれば恥ずかしくない」という話はよく聞きますよね。

近藤
私の娘も、外国人の先生だと恥ずかしがるのですが、アバターだとやってみたいと言っていましたね。
AIによって消費者行動が変化する一方で、企業側のリテラシー不足であったり、人材不足と言うのが課題になってくるかと思いますが、消費者行動の変化に伴い企業も進化し続けなければいけないですよね。 進化し続ける為には企業は具体的にどう最初の一歩を踏み出せば良いのでしょうか?

西本先生
理論というのは結局、思考の積み重ねの上に出来ますので、明日から実践に応用できるものではないです。私たち研究者や専門家が発信するその理論を一度読んでいただくというのが、まず最初のステップになるかと思います。

近藤
今、先生が言われた「理論は思考の積み重ね」と言うのが非常に腑に落ちたのですが、やはり学んだことを考えて自社に落とし込んだ上で、実践していかないといけないわけですね。
やっぱり弊社にご相談いただく企業様の中で、やりたいけど一歩が踏み出せない企業が多くいらっしゃるのですが、まずは研修で「知る」と言うところから始めるのが良いのでしょうか。

西本先生
そうですね。そのために研究をしておりますので、私のような研究者はニュートラルな立場なので、まずは知ってもらうというところで是非お役に立ちたいですね。

近藤
研修でインプットをした後は実際のプロジェクトに進んだりっていう事例が多いのでしょうか?

西本先生
多いですね。私自身オリジナルの研修を持っておりまして、「Marketing Today」という研修なのですが、簡単に言えば時事ネタ100連発で3時間みっちりの研修ですが、結構使っていただいています。1年間で3,000枚を超える投影資料を使って最先端の事例をお伝えし、時代にフィットしたアウトプットを考えるような研修です。

近藤
全て西本先生おひとりで作られたのですか?

西本先生
そうです、毎日のライフワークとして各種メディアから情報をピックアップして、すべてに目を通して自身でリプロデュースしてオリジナル資料として提供させていただいています。
だから、研修内容も毎日アップデートしていて、研修当日のマーケティング情報が登場することも結構あります。

近藤
やはり理論も大事ですが、わかりやすい事例から入る方が聞きやすいですし、最初の学びとしては大きいですよね。マーケティングを初めて学ぶ人にとっても、先生の解釈があるからすっと入ってくると思います。

西本先生
ありがとうございます。研究者としてより多くの方にマーケティングの思考方法を感じてもらえると非常に嬉しいですね。

近藤
1日のみの研修ですか?

西本先生
2日間の研修になります。1日目は3時間かけて事例を解説しインプットを行いまして、2日目はワークショップ形式でグループに分かれて気になったトピックを10個くらいリストアップします。選択したトピックの切り口からマーケティングの企画を一緒に考えていくという形ですね。

天野
1日目だけの研修も可能なのでしょうか?

西本先生
可能です。ワークショップ無しで事例解説の研修だけのパターンもあります。ただ、このような研修は効果を出すにはやはり継続するというのが大事になりますので、。最低でも年2回程度の実施がおすすめですね。

近藤
マーケティングも日々進化し続けますので、継続的に学んでインプットしていく必要がありますよね。

西本先生
その通りです。世の中は皆さんが感じている以上に毎日凄まじいスピードで変化をし続けていますので、我々もその変化に対応し続けなければならないことを身体に染み込ませなければなりません。

天野
こちらの研修はオンラインになりますか?また受講人数の制限などはございますか?

西本先生
オンライン、オフラインどちらでも対応可能です。
受講人数も様々ですが、リアル会場での実施だと最大30名程度、それにオンラインを重ねてハイブリッドにすることで、合計100名以上になったりすることも多々あります。
新卒研修として実施される企業様ですとか、マーケティング部のキャリア開発として実施される企業様もいらっしゃいますので、マーケティングの思考を鍛えるという意味では、業界業種を問わずご相談をいただいております。

近藤
様々な領域で活躍しそうな研修ですね。
当社もですね、DXリテラシーに特化したe-learning「DXリテラシー基礎講座」を開発しております。ビジネスでのDXの重要性であったり、今後のトレンドや実務での活用についての内容なので、日頃からDX領域でのトレンドを意識的にキャッチアップしておりますが、やはりDXやマーケティングの進化の速さに日々驚かされております。その進化に取り残されないためにも、本日お伺いした先生の研究者としての想いでしたり、マーケティングの進化をいまの社会に伝えていくことが、我々の使命だなと改めて感じました。
本日は西本先生の貴重なお話をお伺いし、非常に興味深く、大変勉強させていただきました。誠にありがとうございました!

西本先生
こちらこそありがとうございました!