DXを進める7つのステップを紹介!メリットや注意点も解説
デジタル技術を活用したビジネスの変革を意味するDXは、企業の競争力を高めるために必須の要素です。DXを実現することで、業務の効率化や新たなビジネスの創出などが実現できます。とはいえ、具体的な進め方が分からない方もいるでしょう。
本記事では、DXが必要とされる背景や得られるメリット、具体的な進め方のステップ、必要な要素や注意点を解説します。DXは、正しい進め方を理解し、入念に計画を立てて取り組まなければなりません。DX推進の全体像を掴み、自社に落とし込める内容になっているので、ぜひお役立てください。
▼目次
1.DXとは?
2.DX推進が必要とされる背景
3.DX推進のメリット
3-1.業務効率と生産性の向上
3-2.新たな価値創出による収益の増加
4.DXの進め方のステップ
4-1.現状の調査
4-2.経営戦略・ビジョンの策定
4-3.DXロードマップの策定
4-4.経営トップの同意を得る
4-5.DX推進体制の構築
4-6.DXの実行
4-7.PDCAを回し続ける
5.DX推進に必要な4つの要素
5-1.デジタル化
5-2.業務プロセスの改善
5-3.体制整備・システム構築
5-4.DX人材の採用・育成
6.DXを進める際の注意点
6-1.担当者・責任者を明確にする
6-2.ツールの導入をゴールにしない
6-3.会社全体での最適化を目指す
7.まとめ
1.DXとは?
DXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略で、企業や組織がデジタル技術を活用してビジネスモデルやビジネスプロセス、企業文化などを変革することを指します。具体的なデジタル技術の例は、AI(人工知能)やブロックチェーン技術、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)などです。
また、DXを効率的・効果的に進めるには、課題の認識や社内の方向性の統一に役立つDX戦略の策定が必要です。
テクノロジーが進化するにつれ、DXはより重要な要素として注目されています。DX推進が必要とされる具体的な背景は次項で紹介します。
2.DX推進が必要とされる背景
DX推進が必要とされる背景には以下の3つが挙げられます。
- 「2025年の崖」
- デジタル化による業務の効率化・生産性向上
- 顧客ニーズの変化への対応
「2025年の崖」とは、2018年に経済産業省が好評した問題提起のことです。日本の企業がDXの取り組みを行わなかった場合に、2025年以降に年間で最大12兆円の経済損失が発生して、国際競争力を失うことになるという課題を示しています。
業務の効率化・生産性向上を実現するには、ビッグデータやITツールの活用によるDXが必要です。DXにより業務の自動化や効率化を進めることで、さらなる事業成長が見込めます。
顧客ニーズの変化への対応にDXが必要な理由は、スマートフォンやSNSの浸透による顧客ニーズの変化が早まっているからです。変化に対応するためには、DXによる情報収集や分析、データ活用が求められます。
以上のようにDXの推進は、デジタル対応が遅れることへのリスクヘッジや、競争力を維持・向上させるために必要とされています。
出典:DXレポート|経済産業省
さらに詳しいDX推進の必要性を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>>【基礎知識】DX戦略とは?意味や成功事例をまとめて解説
3.DX推進のメリット
DX推進のメリットは、「業務効率と生産性の向上」と「新たな価値創出による収益の増加」です。DXの進め方を具体的に見ていく前に確認しておきましょう。
3-1.業務効率と生産性の向上
デジタル技術を活用するDXを推進することで、業務効率と生産性を大きく向上させられます。従来、手作業で行っていた作業をデジタルツールに任せることで、ヒューマンエラーの減少や社内リソースの確保、作業時間の短縮などが可能です。
これにより、売上アップや人件費の削減などのメリットに加え、職場環境の改善による社員満足度の向上も期待できます。DXはビジネスに大きな変革をもたらすものなので、業務効率や生産性へのメリットも大きなものとなるでしょう。
3-2.新たな価値創出による収益の増加
DX推進は、業務の効率化や生産性の向上だけでなく、新規ビジネスの開発による収益の増加にもつながります。DX推進は優れたデジタル技術の導入を意味するので、これまでできなかったビジネスモデルの構築が可能となるでしょう。
例えば、新たな分野への参入や、AIやIoTを取り入れた新たなプロダクトの開発などが考えられます。DX推進は、自社のビジネスにおける可能性を広げ、その結果、収益の増加につながることがメリットです。
4.DXの進め方のステップ
DXの進め方のステップは以下のとおりです。
- 現状の調査
- 経営戦略・ビジョンの策定
- DXロードマップの策定
- 経営トップの同意を得る
- DX推進体制の構築
- DXの実行
- PDCAを回し続ける
それぞれのステップの内容や注意するべきことを解説します。
4-1.現状の調査
DXを始める前に、まず現状の調査が必要です。現状のデジタル技術の活用状況や業務プロセス、組織構造を把握し、改善の余地がある部分を特定します。具体的には以下のような項目です。
- 自社のリソース調査
- 社内のITシステムの種類や活用状況の調査
- 社員のデジタルスキルを評価するアンケート調査
- DXを実施した企業の事例調査
- 顧客ニーズやインサイトの調査
これらの調査には、市場・競合・自社の視点からなる3C分析などを活用するとよいでしょう。それぞれの要素を分析することで、業務プロセスの可視化や業務効率化につながるポイントの発見、新たな市場の開拓などにつながります。
4-2.経営戦略・ビジョンの策定
DXを実施するには、経営戦略・ビジョンを策定しなければなりません。その目的は、DXで実現したい成果を明確にすることや、社員全員に同じ方向を向いてもらうためです。DXは長期間・大規模なプロジェクトになることが多いため、入念な経営戦略の策定や、ステークホルダーに響くメッセージの発信が求められます。
例えば、デジタルツールの活用によるオムニチャネル戦略や、AIを活用した顧客対応の改善を目的とした経営戦略、ビジョンの策定などです。他にも、デジタルツール・データの活用などによる新規事業やイノベーションの推進なども考えられます。
DXにより実現できる未来を明確にすることで、効率的なプロジェクト推進、社員のモチベーション維持などの効果があります。
4-3.DXロードマップの策定
DXプロジェクトの大枠となる経営戦略・ビジョンを策定した後は、さらに具体的な行動に落とし込むためのロードマップを策定します。ロードマップで考えるべき要素は以下のようなものです。
- 業務の優先順位
- KPIの設定
- 投入する予算と配分
- 各業務のタイムラインと進捗確認のタイミング
上記のようなことを詳細に取り決め、それに沿ってDXを進めていきます。ロードマップの策定はDXの成果に直結する重要な要素なので、実現可能性をかんがみながら、必要であれば修正しつつ進めましょう。
4-4.経営トップの同意を得る
DXは特定の部門のみで進められるものではありません。大きな改革を実行するためには、経営トップの同意を得る必要があります。しかし、DXは長期にわたりコストがかかるので、経営トップの同意を得るにはプレゼン内容に工夫が求められます。
例えば以下のような要素を盛り込むとよいでしょう。
- 具体的な戦略 ・設定したロードマップを視覚的に分かりやすく伝える ・実現できる根拠や得られる結果を明確に伝える
- ROI(投資収益率)の提示 ・ROIを具体的に示すことで、承認を得られやすくなる ・業務効率化によるコスト削減、売上・顧客満足度の向上などを考慮する
- リスクと対策の提示 ・リスク要因と対策をセットで提示すると安心感を与えられる ・セキュリティ問題やプロジェクトの遅延・失敗など
- 成功事例の紹介 ・成功事例の提示により価値を感じてもらう ・同業他社、他業界の成功事例を自社のDX成功の根拠にする
このような要素を網羅的に伝えることで、経営トップの同意を得られる可能性が高まります。
4-5.DX推進体制の構築
実際にDXを実施する前に、推進体制の構築を行います。自社の規模やリソースを考慮して最適な方法を検討することが大切です。推進体制の主なパターンとしては、以下の3つがあります。
- IT部門中心の体制
- 事業部門中心の体制
- 専門チームの設置
IT部門を中心とした体制にすると、ITスキルの高いメンバーになるため、システムの構築や変更がスムーズに進む利点があります。しかし、顧客との接点が少ないため、ビジネスモデルの構築には適さないケースがあります。
事業部門中心の体制では、実際に事業を行う社員がDXを設計するため、顧客ニーズを捉えた企画の立案ができます。しかし、デジタル技術に精通した人材が少ない場合、IT部門にサポートを求める必要があるでしょう。
専門チームの設置は、各役割に適した優秀な人材で進められることがメリットです。しかし、経営層と専門チームのみでプロジェクトを進めてしまう恐れがあるため、各部署との丁寧なコミュニケーションが求められます。
それぞれ一長一短あるため、自社に最適な方法を選択することが重要です。
4-6.DXの実行
DXは時間・コストの負担が大きいため、一気に進めるのはリスクがあります。まずは小規模からはじめ、各所からの理解を得ながら進めることが大切です。
具体的には、現状の業務のデジタル化からはじめるとよいでしょう。クラウドサービスやWebアプリを活用し、アナログな業務をデジタルに置き換えていきます。次に、業務・製造プロセスのデジタル化に取り組み、徐々に成功体験を積み上げていきます。
全社まとめて実施するより、まずは特定の部署や事業から試してみるとよいでしょう。
4-7.PDCAを回し続ける
PDCAは、プロジェクトの進捗や効果を継続的に評価し、改善策を実施して最終的な目標に向かって進むためのフレームワークです。
DXは継続的な取り組みが必要であり、1度の取り組みで完了するものではありません。技術の進化や市場環境の変化に対応し、組織が成長を続けるためには、PDCAサイクルを回し続けることが重要です。PDCAによりプロジェクトの問題点や改善点を見つけ、新たな施策を立案・実行することで、より効果的なDXを実現できます。
具体的には、KPIの評価による適正値の検討や、進捗を見ながらの調整、施策効果の定量的・定性的な測定などです。
データを基にしたPDCAを継続的に行い、より効果的なDXに軌道修正していきましょう。
5.DX推進に必要な4つの要素
DX推進に必要な4つの要素は以下のとおりです。
- デジタル化
- 業務プロセスの改善
- 体制整備・システム構築
- DX人材の採用・育成
それぞれ具体的に解説します。
5-1.デジタル化
デジタル化は、業務の効率化や効果的な意思決定を実現できるため、DX推進に必要な要素です。具体的には、「社内外の情報をデジタルデータとして集約し、分析や活用が容易になるように整理する」「紙媒体で行ってきた業務を電子化するペーパーレス化を実施する」などです。
売上データや顧客情報をデータベースに蓄積しておくと、これらの情報を基にマーケティング戦略を立案できます。また、ペーパーレス化を進めることで、紙の契約書や判子の廃止による業務効率化や、検索性・セキュリティ性の向上などが期待できます。
ビジネスに変革をもたらすようなDXを実施するためにも、社内のデジタル化は必須要素です。
5-2.業務プロセスの改善
社内のデジタル化を進めるためには、従来の業務プロセスも改善しなければなりません。デジタルツールを活用することで、これまでとは異なる効率的なプロセスで仕事を進めることができます。
従来の方法を続けるのではなく、導入したデジタルツールやシステムを有効活用できるよう、業務プロセスを刷新することが重要です。例えば、電子帳票システムを導入した場合、必要のない確認作業を削減し、より重要な業務に時間を投下できます。また、クラウドサービスの活用により、リモートワークを導入できるかもしれません。
このようにDX推進には、デジタルツールをどのように活用したらよいか考え、業務プロセスを改善することも重要な要素です。
5-3.体制整備・システム構築
DXを推進するためには、まず企業内の体制を整えることが必要です。これには、プロジェクトチームの構成や役割分担、外部との連携体制などが含まれます。例えば、DXプロジェクトを推進するために専門チームを組織し、各部門からメンバーを選出したり、外部にコンサルティングを依頼したりなどです。これにより、企業全体の意識を高め、新たな技術をスムーズに導入できるようになります。
次に、DX推進のためのシステム構築も重要です。これには、クラウドサービスやAI技術、データ分析ツールの導入などが挙げられます。具体的には、クラウドベースのCRM(顧客管理システム)を導入し、顧客情報を一元管理することで営業活動を効率化するなどです。
DXに適任な人材の把握や必要となるシステムを把握し、体制整備・システム構築に取り掛かることが重要となります。
5-4.DX人材の採用・育成
DXを成功させるためには、優れたデジタル人材の採用や育成が重要です。ITスキルやデータ分析能力を持つ人材の採用、既存社員のスキルアップなどをすることで、より質の高いDX戦略を実施できます。
例えば、「データサイエンティストやエンジニアを積極的に採用し、新たな技術を活用できる体制を築く」、「従業員全員にオンラインコースを提供し、ITスキルやデータ分析能力の向上を図る」などが挙げられます。
また、体系的な教育ノウハウを持つ外部の会社に依頼するのも1つの手段です。株式会社ココエでは、DX人材の育成にはロードマップに沿って進めることを推奨しており、一般社員、DX推進者それぞれに最適化されたロードマップを用意しています。DXが進まない要因の1つは、DXを統括できる人材がいないことです。DXプロジェクトを推進できる、テクノロジーに精通した人材の育成が重要といえるでしょう。
DX人材に関する詳しい情報は、以下の記事をご覧ください。
>>>DX人材の定義とは?6つの業種・3つのマインドセットについて
6.DXを進める際の注意点
DXを進める際の注意点は以下の3つです。
- 担当者・責任者を明確にする
- ツールの導入をゴールにしない
- 会社全体での最適化を目指す
DX成功のために押さえておきましょう。
6-1.担当者・責任者を明確にする
DXプロジェクトを成功させるためには、担当者と責任者を明確にすることが重要です。担当者はプロジェクトの具体的なタスクを実行し、責任者はプロジェクト全体を統括する役割を担います。責任の所在が曖昧な場合、それぞれが行うべき業務が不明確で効率的にDXを進められません。
DXでは、プロデューサーやビジネスデザイナー、アーキテクト、エンジニアなど、さまざまな専門家と、サポートをする多くの社員が必要です。それぞれの職種から適切な担当者・責任者を選出し、各チームがやるべきことを明確にしなければなりません。
とはいえ、社内のDX人材が不足している場合もあるでしょう。その際は、専門性の高いビジネスパートナーに委託し、DX戦略立案のサポートや社員のスキルアップを図るようにするのも1つの方法です。
6-2.ツールの導入をゴールにしない
DXではさまざまなツールやソフトウェアが導入されますが、これらの導入自体を目的にしてはいけません。目的はあくまで業務の効率化や競争力の強化、ビジネスモデルの変革であり、ツールの導入はあくまでも手段の1つです。
例えば、ECサイトの管理・改善を目的にCRM(顧客管理システム)を導入したとします。導入したことに満足し、ツールを使いこなしたり自社のビジネスに最適化したりできなければ、目標とする成果は達成できないでしょう。社員が実際に使いこなせるような研修やサポート体制を整えることで成果を得られます。
DXの実現はツールやソフトウェアに精通してはじめて実現できるので、導入に満足せず、その先の成果につながる取り組みを行いましょう。
6-3.会社全体での最適化を目指す
DXを進める際は、部門ごとの最適化ではなく、会社全体での最適化を目指すことが重要です。それぞれの部門を個別に最適化しても、全体の効率化や競争力強化につながらない場合があります。
例えば、各部門が独自にデータを管理している場合、情報共有が不十分で業務効率が低下する恐れがあります。そのため、会社全体でデータを一元化するプラットフォームを導入し、情報共有の効率を高めることを検討しなければなりません。
また、定めたビジョンや目標を社内全体に浸透させる取り組みも大切です。社員全員がビジョンや目標を理解することで、やるべきことを能動的に考え、成果につながるプロジェクトになるでしょう。
7.まとめ
DXの推進は、デジタルツールの進化によりますます重要度が増しています。効果的なDXを行うことで、業務効率の向上や新たな価値の創出による収益の増加が期待できます。DXは早急に取り組むべき項目ですが、適切な進め方を理解して実施しなければなりません。本記事で紹介した進め方を参考に、DX戦略の策定に挑戦してみてください。
また、プロジェクトを推進するためにはDXの内製化が必要です。「社内にDX人材が不足している」という企業さまは、株式会社ココエの「DX人材育成プログラム」を導入してみてはいかがでしょうか。
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