【令和5年】人材開発支援助成金とは?目的や支給金額・申請方法などわかりやすく解説
社会情勢の変化やテクノロジーの進化などに対応できる人材の確保や育成、生産性を高めるための取り組みを求める企業が増えています。
しかし、実際に人材を育成するには職業訓練や教育研修などの費用がかかります。そのような費用の一部を国から助成してもらえるのが人材開発支援助成金です。
この記事では、人材開発支援助成金の基礎知識や、令和5年4月からの変更点などを解説します。支給金額や申請手続きの流れなども解説するので、人材開発の促進を検討している担当者の方はぜひ参考にしてください。
▼目次
1.人材開発支援助成金とは
1-1.人材開発支援助成金の目的
1-2.キャリアアップ助成金との違い
2.【令和5年4月】人材開発支援助成金の変更点
3.【コース別】人材開発支援助成金の概要と金額
3-1.人材育成支援コース
3-2.教育訓練休暇等付与コース
3-3.人への投資促進コース
3-4.事業展開等リスキリング支援コース
3-5.建設労働者認定訓練コース
3-6.建設労働者技能実習コース
3-7.障害者職業能力開発コース
4.人材開発支援助成金申請手続きの流れ
4-1.訓練計画書を提出する
4-2.必要な訓練を実施する
4-3.支給申請書を提出する
4-4.支給審査が行われる
5.人材開発支援助成金を申請する際の注意点
6.人材開発支援助成金を活用し人材育成を促進しよう
1.人材開発支援助成金とは
人材開発支援助成金とは、労働者の職業訓練経費や、訓練期間中の賃金の一部を国が助成する制度です。企業が労働者に対して、業務に関連した知識や技能を習得させるための職業訓練を実施した場合に対象となります。
元々はキャリア形成促進助成金という名称でしたが、平成29年4月から人材開発支援助成金に変更されました。それに伴ってコースの再編と廃止、労働生産性が向上した場合の助成金増額が実施されています。
まずは制度の目的やキャリアアップ助成金との違いについて解説します。
1-1.人材開発支援助成金の目的
人材開発支援助成金の目的として、労働者の人材育成やキャリアアップに積極的に取り組みたい企業への支援があります。
人材開発は労働者数が増えるほど費用がかりますが、生産性向上のためには重要なコストです。
ただし、大手企業と異なり人材育成にかかる費用を準備できず、人材確保以外に余裕がない中小企業は少なくありません。人材開発支援助成金を利用することにより、企業の生産性の向上が期待できます。
1-2.キャリアアップ助成金との違い
人材開発支援助成金と類似した制度にキャリアアップ助成金があります。双方の違いは次の通りです。
助成金名 | 対象者 | 目的 |
人材開発支援助成金 | 雇用保険の被保険者 | 主に正規雇用者の育成と教育 |
キャリアアップ助成金 | 非正規雇用者 | 非正規雇用者の待遇を正規雇用者と同等、もしくは正規雇用者に近づけるための助成 |
人材開発支援助成金の対象者は、雇用保険の被保険者(原則として週の労働時間が 20 時間以上かつ 31 日以上の雇用見込みがある者)です。一方、キャリアアップ助成金の対象は非正規雇用者(有期契約労働者・無期雇用労働者)となっています。
有期契約労働者とは、契約期間の定めがあるパート、アルバイト、契約社員などを指す言葉です。無期雇用労働者は契約期間の定めがない非正規雇用者を指します。
つまり人材開発支援助成金には「正規雇用者を含めた雇用保険被保険者の育成」という目的がある一方、キャリアアップ助成金は「非正規雇用者を正規雇用者に引き上げる」という目的の違いがあります。
2.【令和5年4月】人材開発支援助成金の変更点
人材開発支援助成金を企業が利用しやすくするため、令和5年4月1日から制度の見直しが行われました。
訓練コースの統合として、従来の特定訓練コース、 一般訓練コース、特別育成訓練コースが人材育成支援コースに一本化されました。
人材育成支援コースには、人材育成訓練、認定実習併用職業訓練、有期実習型訓練が含まれています。
次に、雇用形態にかかわらず訓練の受講が可能(有期実習型訓練を除く)となり、OFF-JTの最低訓練時間が10時間以上に統一されています。人への投資促進コースの対象者および対象訓練の拡充や、計画届の提出方法の変更も改正点です。
また、生産性要件が廃止され、「賃金要件」および「資格等手当要件」が新設されました。賃金要件と資格等手当のいずれかの基準を満たした場合、訓練経費が加算されるというメリットがあります。
3.【コース別】人材開発支援助成金の概要と金額
以下7つのコースの概要と助成金額などを解説します。
- 人材育成支援コース
- 教育訓練休暇等付与コース
- 人への投資促進コース
- 事業展開等リスキリング支援コース
- 建設労働者認定訓練コース
- .建設労働者技能実習コース
- 障害者職業能力開発コース
3-1.人材育成支援コース
人材育成支援コースとは、企業が労働者に職務関連の知識・技能を習得させることを目的として計画に沿った訓練を実施した場合に助成されるコースです。以下3つの訓練が含まれています。
- 人材育成訓練
- 認定実習併用職業訓練
- 有期実習型訓練
上記の人材育成訓練には、OFF-JTによる10時間以上の事業内訓練または事業外訓練という要件があります。認定実習併用職業訓練は訓練実施期間6ヵ月以上2年以下、有期実習型訓練は訓練実施期間2ヵ月以上などが要件です。
なお、認定実習併用職業訓練と有期実習型訓練はOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練となっています。
人材育成支援コースの支給金額は賃金助成(1人1時間当たり)760円、中小企業の経費助成は45%~70%、同じく中小企業のOJT実施助成(1人1コース当たり)が認定実習併用職業訓練で20万円、有期実習型訓練は10万円です。
3-2.教育訓練休暇等付与コース
教育訓練休暇等付与コースとは、事業主による教育訓練以外の訓練を労働者に受けさせるため、必要な休暇や短時間勤務を適用させる制度です。
労働者の自発的職業能力開発を受ける機会を確保し、職業能力の開発と向上を促進するという目的があります。
教育訓練休暇制度の要件として、「3年間に5日以上の取得可能な教育訓練休暇制度(有休)を計画し、就業規則などに施行日を明記する」や「1日単位で取得可能であること」などがあります。経費助成として30万円が支給されます。
3-3.人への投資促進コース
人への投資促進コースには「人への投資の加速化」という目的があり、国民からの提案を形にしている制度です。以下5つの訓練・制度が含まれています。
- 高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練
- 情報技術分野認定実習併用職業訓練
- 長期教育訓練休暇等制度
- 自発的職業能力開発訓練
- 定額制訓練
上記のうち、高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練には、「主たる事業が日本標準産業分類の大分類の情報通信業」という事業主の要件があります。もしくは「産業競争力強化法に基づく事業適応計画の認定を受けていること」や「 DX認定を受けていること」などの要件を満たさなければなりません。
情報技術分野認定実習併用職業訓練の要件には、「IT関連業務を主に担う組織やDXを推進する組織を有していること」や「訓練終了後にジョブ・カードによる職業能力の評価の実施」などがあります。
自発的職業能力開発訓練は「自発的職業能力開発経費負担制度を定めるとともに、その制度に基づいて、被保険者に経費を負担する事業主であること」などが要件です。
また、長期教育訓練休暇制度には「所定労働日に30日以上の長期教育訓練休暇の取得可能な制度を就業規則などに明記」や「30日以上の休暇の取得方法として、10日以上の連続した取得かつ、そのうち1回は30日以上連続して取得」などの要件があります。
定額制訓練の場合は「定額制サービスによる訓練」や「業務上義務付けられた労働時間に実施される訓練」などが要件です。
上記以外にも、各訓練には「労働者の要件」と「訓練の要件」が定められているので注意してください。
たとえば高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練の労働者の要件には、「日本の大学等を卒業し、学士以上の学位を取得した者」などが定められています。訓練の要件としては、「実訓練時間数10時間以上」「OFF-JTであること」などがあります。
中小企業の場合の支給金額は、賃金助成額が高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練で960円(1人1コース1時間当たり)、情報技術分野認定実習併用職業訓練で760円(1人1コース1時間当たり)、長期教育訓練休暇制度は6,000円(1人1日当たり)です。
経費助成率は45%〜75%ですが、長期教育訓練休暇等制度の場合は20万円となっています。
3-4.事業展開等リスキリング支援コース
事業展開等リスキリング支援コースとは、事業主が新規事業の立ち上げなどの事業展開に伴って助成される制度です。雇用する労働者に対して、新分野で知識・技能を習得させる訓練を実施した場合などに助成されます。
基本要件として「OFF-JTにより実施される訓練」や「実訓練時間数が10時間以上」があります。対象となるOFF-JTは、一定の条件を満たす事業内訓練と事業外訓練です。
中小企業の場合の支給金額は経費助成が75%、賃金助成が1人1時間当たり960円です。
3-5.建設労働者認定訓練コース
建設労働者認定訓練コースは、建設事業主などが建設労働者に対して、雇用改善・技能向上などの取り組みを行った場合に支援を受けられる制度です。
経費助成と賃金助成に分かれており、経費助成に関しては、認定職業訓練または指導員訓練のうち、建設関連の訓練を行った場合に支給されます。また、賃金助成は建設労働者に対して認定訓練を受講させた場合に支給されます。
経費助成を受給できる建設事業主の要件は下記です。
- 中小建設事業主
- 雇用管理責任者の選任
- 都道府県から認定訓練助成事業費補助金または広域団体認定訓練助成金の交付を受けて認定訓練を行うこと
賃金助成を受給できる建設事業主の要件は下記です。
- 中小建設事業主
- 雇用管理責任者の選任
- 雇用する建設労働者が認定訓練を受講する期間、通常の賃金額以上を支払うこと
- 人材開発支援助成金の支給決定を受けること
支給額は、経費助成が助成対象経費の6分の1、賃金助成が1日1人につき3,800円です。
3-6.建設労働者技能実習コース
建設労働者技能実習コースの目的は、建設労働者認定訓練コースと同様です。
建設労働者技能実習コースは、若年者などの育成と熟練技能の維持・向上のため、キャリアに則した技能実習を行った場合に支給されます。
受給できる建設事業主の要件には以下があります。
※経費助成、賃金助成ともに共通
- 中小建設事業主
- 雇用管理責任者の選任
- 建設労働者(雇用保険被保険者)に対して所定労働時間内に技能実習を受講させ、その期間に通常の賃金額以上を支払うこと
など
中小企業の場合の支給金額は、経費助成が4分の3、賃金助成が1日1人につき8,550円です。
3-7.障害者職業能力開発コース
障害者職業能力開発コースとは、障害者の仕事に必須なスキルを開発・向上させるため、事業主などが行う一定の教育訓練施設の設置・運営費用を助成する制度です。障害者雇用の促進と継続という目的があります。
主な受給要件には以下があります。
- 障害者職業能力開発訓練事業を行うこと
- 訓練対象障害者に障害者職業能力開発訓練事業を行うため、訓練施設や設備の設置・整備または更新すること
受給金額は、施設などに要した費用の4分の3、運営費は5分の4です。
4.人材開発支援助成金申請手続きの流れ
人材開発支援助成金申請手続きの流れとして、以下それぞれについて詳しく解説していきます。
- 1.訓練計画書を提出する
- 2.必要な訓練を実施する
- 3.支給申請書を提出する
- 4.支給審査が行われる
なお、提出書類に関しては、下記の厚生労働省ホームページでダウンロードできます。
4-1.訓練計画書を提出する
まずは職業訓練に関する実施計画届(様式第1-1号)、訓練別の対象者一覧(様式第3号)、人材開発支援助成金事前確認書(様式第11号)を作成します。
添付書類として、事業所確認票(様式第14号)、雇用契約書の写し、OFF-JTの実施内容を確認できる書類なども必要です。
訓練実施方法がeラーニングだったり、対象労働者が育児休業中だったりする場合は別途必要な書類があるので注意しましょう。
書類作成と添付書類を準備した後、管轄の都道府県労働局に提出します。提出期限は訓練開始日の1ヵ月前なので、早期に準備しなければなりません。
職業訓練実施計画届の内容に変更が生じた場合は、職業訓練実施計画変更届(様式第3号)を提出します。
なお、上記の内容は、申請するコースによって異なることがあります。
4-2.必要な訓練を実施する
職業訓練実施計画届(様式第1-1号)の内容に基づいて教育訓練を実施します。
人材育成訓練としては、社内・社外講師によって行う事業内訓練の実施や、教育訓練施設で行う事業外訓練の受講があります。
認定実習併用職業訓練・有期実習型訓練は、会社内のOJTおよび教育訓練機関などで行われるOFF-JTの受講です。その場合、ジョブカードなどによって訓練終了後に対象者の評価が必要なので注意しましょう。
なお、訓練費用は支給申請日までに支払わなければなりません。
4-3.支給申請書を提出する
職業訓練の終了翌日から2ヵ月以内に支給申請書(様式第4号)を提出します。申請先は管轄の労働局ですが、ハローワークで受け付けている場合もあります。
各コース共通で必要な書類は以下です。
- 支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)
- 支払方法・受取人住所届
- 人材開発支援助成金 支給申請書(様式第4号)
- 賃金助成およびOJT実施助成の内訳(様式第5号)
- 経費助成の内訳(様式第6号)
- OFF-JT実施状況報告書(様式第8-1号)
添付書類として以下が必要です。
- 領収書や振込通知書のコピー
- 賃金台帳や給与明細書のコピー
- 就業規則、賃金規定などのコピー
- 出勤簿、タイムカードなどのコピー
- 雇用契約内容に変更があった場合は変更後の雇用契約書のコピー
など
上記の他にも、コースによって必要な書類があるので確認してください。
4-4.支給審査が行われる
支給申請書(様式第4号)の提出後に労働局の支給審査が行われ、「助成金が支給されるかどうか」が決定します。支給決定の場合は支給決定通知書が送付された後、2週間ほどで指定した口座に入金されます。
なお、審査にはある程度の時間がかかるので注意しましょう。
5.人材開発支援助成金を申請する際の注意点
人材開発支援助成金を利用する際の注意点として、一度提出した書類は基本的に差し替えられないため、提出前の十分な確認が必要ということが挙げられます。
また、基本的に教育訓練開始日の1ヵ月前に計画書を提出し、訓練終了後の2ヵ月以内に支給申請書を提出しますが、コースによって書類提出期限が異なることがあるので注意しましょう。
条件や対象となる経費に関しても、それぞれのコースで違いがあるため、詳細の確認が必要です。そもそも助成金の対象となる職業訓練なのかどうかや、どの範囲まで助成の対象となるのかに関しても労働局に問い合わせてみてください。
6.人材開発支援助成金を活用し人材育成を促進しよう
人材開発支援助成金とは、職業訓練経費や賃金の一部をカバーしてもらえる国の制度です。人材育成やキャリアアップに取り組む企業への支援という目的があります。
人材開発支援助成金の具体的なコースには、人材育成支援コース、教育訓練休暇等付与コース、人への投資促進コースなど、全部で7つあります。それぞれ要件や助成額が異なる部分があるので確認しましょう。
具体的な手続きは、訓練計画書の提出、必要な訓練の実施、支給申請書の提出、支給審査という流れで進みます。
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